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―――
――
――早く、わたしにアイに来て。
メールを確認してから、俺はスマートフォンをテーブルに置いた。
今日、俺はまた彼女にアイに行く。それは昨日今日決断したというわけでもなくて、もうずっと前から考えていた事なので、例えば誰かに何かを言われたりだとか、何かが起きたりだとか、そういった事でこの意志が揺らぐ事はないと断言出来る。それほどまでに、俺の決意は固かった。
8時40分。もう少し早く起きる予定だったのだが、時計の針は結局いつも通りの時間を示している。俺はベッドからゆっくりと起き上がり、部屋のカーテンを開け、顔を洗い、歯ブラシを口にくわえた。
――思わず苦笑してしまいそうになるくらい、なんて事ない、普段と同じ休日の朝だった。
「…………」
ふと壁に掛かっているカレンダーに目がいく。
俺はテーブルの隅に置いてあるボールペンを手に持って、ふらりと立ち上がった。
そこに、『きっと今日で100倍目』と書き込む。
ようやく――そう考えながら、ボールペンを意味もなく、かしかしノックした。
――『今日』はきっと、『今日』で終わる。
今日、俺はまた、彼女にアイに行く。
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