今日また彼女にアイに行く。

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――― ―― 車を運転しながら、俺は彼女の事を考えていた。彼女は以前「1日中、君がわたしの事を考えていてくれたらうれしいな」などと言った事があったが、嘘や誇張ではなく、最近は本当に1日中彼女の事を考えている。起きている時だけではなく、それこそ眠っている時まで、ずっと、だ。 ――彼女の事を、アイしているから? いや、違う。 彼女は確かに、とても美しい。美しかった。頭も良いし、気も利いた。何より、いつでも俺の事を1番に考えてくれていた。『自分にはもったいない』という言葉がぴったりと当てはまるような、そんな、自慢の彼女だった。 けれど、多分俺は最初から最後まで、彼女の事を本当の意味ではアイしてなどいなかったのだと思う。そしておそらく、彼女の方もそうだったに違いない。 きっと彼女は俺の事など、アイしてなどいなかった。 ――互いに互いを、必要だと思っていた。必要だと思い込んでいた。ただ、それだけだ。 ……言うなれば、ただの、依存。盲目的で、妄信的な、歪んだ、愛情だ。 ハンドルをきる。するとタイミングを合わせたかのように、スマートフォンから、ぴろん、という音が鳴った。 思わず顔が歪む。運転中なので内容を確認する事は出来ないが、そんなものは見ずとも分かる。どうせ、彼女からだ。 ――早く、わたしにアイに来て。 彼女からのメールは、いつもそんな1文から始まり、そしていつも、そんな1文で終わる。 君にアイたい。君の事が好きだから、一緒にいないと不安になる。だから、早く、アイたい。アイに来て。――そんな内容のメールが、十数分置きに、1日中送られてきた。数にして、1日きっかり100通だ。 思えば彼女は、『100』という数字を好んでいた。 100点。100パーセント。確かに100という数字はキリもいいし、キッチリしている感じがする。ある種完璧主義の彼女にはぴったりの数字かもしれない。 同僚の女性社員とメールのやりとりをしただけで100分間正座をさせられたり、歩きながら、やや露出度の高い女の事を無意識で目で追っていた、というだけで100回謝罪させられたり――そんな事が、いったい何回あっただろうか。 「…………」 懐かしい思い出。過去の記憶。――当時はきっとつらかっただろうが、『今この状況』からすれば、どれもかわいいものだ。
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