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それは諦めか、許容か※
男は、それから殊更に甘くなったと思う。いや、過保護、という言葉の方がしっくり来るかもしれない。
一緒にいる時間が増え、暇さえあれば俺を抱きしめている感じだ。今までは起きると一人きりだったのが、目を覚ますと男の腕の中に収まっているようになった。
「…」
今もまた、座りながら、男に正面から抱きしめられている。ゆったりとした動きで頭や背をなでられ、俺はぼんやりとした面持ちで体を預けていた。
相変わらず触れられると体がビクリと反応してしまうけど、前よりは慣れたかもしれない。
「…ん、…」
男は俺の後頭部を押さえ、そっと口付けてきた。
特に抵抗することなく、そのキスを受ける。
唇を舐められたので、おそるおそる口を開けると、ぬるりとした厚みのある舌が口内に差し込まれる。舌同士を絡められたり、吸われたり、いいように蹂躙される。
ただ、いつも男に乱されるだけでは悔しいため、試しに俺も少し真似してみた。すると男は予想外だったのか、一瞬固まった。
ぴちゃ、ぴちゃ、という水音が響く。
ぺた、とおもむろに男の胸に触れると、ドクドクと早鐘を打っているのが分かった。
男は、たぶん…俺のことが好きなんだと思う。理由は分からない。でも、伝わってくる。それに応えるわけじゃないけど、現状、俺は男がいないと生きていけない。だからその感情にすがるしかない。
「…ん、んっ、…ぁっ」
男は口づけをしながら、後孔に触れる。
ぐにぐにと刺激され、つぷん、と指先が出し入れされる。何度も割り開かれているそこは、難なく男の指を受け入れる。
腰が緩く動く。男の昂りと自身のそれが布越しに擦れ、もどかしい快感に支配される。
「…」
足りない。決定的な刺激がほしい。
そっと男の首に腕を回し、耳元に口を近づける。
「…もっと、……激しく、して…」
すると男は、これまた予想外な言葉だったのか、面白いくらい大袈裟に動揺したのが伝わってきた。でもそれも一時で、男は性急に指を奥まで入れ、ぐりぐりと俺の弱いところをいじりはじめた。
「ひ、っあ…っ、そこ…きもち、い…っ」
待ち望んだ快感に体が震える。
これからまた、中を大きな質量で押し拡げられる。それを期待して、昂りからひくり、と蜜がこぼれるのが分かった。
「あ…っ、ぁ…、おっき、い…」
双丘の間を男の昂りが擦る。
その刺激だけで、俺の浅ましい後孔はきゅう、と収縮を繰り返す。
耐えるように男の肩に額を押し付けると、優しく背を撫でられた。しかし、その優しさとは裏腹に、狂暴なほど熱く大きな屹立が後孔の入口をつつく。そして、ぷちゅ、という音をさせながら先端が中に入り込んできた。
「あ、ぁあ…っ、」
ゆっくりと、その存在を刻み込むように男の昂りが進んでくる。感じるところをかすめながら、最奥を目指して男のそれは進んでいき、半ば強引なその行為が「気持ちいいこと」だと頭が、体が、判断してる。
全て収まりきる時には、俺の昂りも上を向き、だらだらとはしたなく蜜がこぼれているのが感じられた。
「は、ふ、…っん…」
男は緩く律動を始める。それに合わせるように、俺も腰を上下させてしまう。
次第にスピードが上がっていき、肌のぶつかる音が部屋に響く。見えないことでさらに、濡れた音で鼓膜も犯されているような錯覚を覚えた。
「あ、ぁっ、いい…っ、そこ、ぐりぐりすると、気持ちいい…っ」
わざとらしく男の耳元で煽るようなことを言う。
男は息を荒げながら俺を強く抱きしめた。
気持ちいいのは本当だ。ただ、それを口に出すのは恥ずかしいし、嫌だけど…あえて伝えるのは男を動揺させたいから。
俺を監禁して、淫らな体にしたことへのささやかな仕返しだ。男が俺の言葉や行動で狼狽えるのを感じるのは楽しい。
「あ、っ、んん、も、だめ、イく…っ!」
激しさを増す律動に耐えきれず、どくん、と自身から白濁を吐き出す。後孔がきゅう、と締まり男の昂りが強く刺激される。そして、中に濡れた感覚が広がった。
脱力して男にもたれかかる。
男は中に入れたまま、俺を抱きしめ、愛おしむように撫でたりキスをしたりを繰り返した。
男の行為を受け入れていることに自嘲しながら、俺はまた、男が与える甘い毒のような抱擁に包まれていた。
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