ヒロインになる魔法

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 後日、先輩が亡くなったと聞いた。  親戚の方が手を合わせに来ませんか、と僕を先輩の家に呼んでくれた。どうやら先輩が僕のことを話していたらしい。僕は最後にきちんと顔を見せようと、何日間も本を読み、先輩と共に時間を過ごした家へ向かった。  親戚の方は温かく迎えてくれた。先輩が小さい頃の話など、僕が知らなかった色々なことを沢山聞いた。  その中で一つ気になる話があった。 「部屋にね、あの子の趣味には合わないような洋服が沢山あったのよ。それにカツラも。コスプレ趣味でも隠していたのかしら。」  僕は、その、先輩の趣味に合わないという洋服やカツラがどんな色でどんなものだったか詳しく聞こうとした。  だけどやめた。  先輩はそんなこと望んでいないはずだから。その洋服がたとえ赤いワンピースやセーラー服だろうと関係ない。 ──先輩は、悪魔からヒロインになる魔法をもらったのだから。
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