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叫び声に水汲みの水をばちゃんと落としたしまった姑は、なりふり構わず走りだした。
「兵太郎! 兵太郎!」
玄関までやってくると、姑は倒れ込んでいる兵太郎の身を起こした。
「兵太郎! 兵太郎!」
真っ青な顔の兵太郎が目を覚ましたのを見ると、声を荒げた。
「誰か! 誰か医者を呼んできて頂戴!」
祖母の腕の中で、兵太郎は白い直衣姿の真っ赤な鬼が、空へ消えていくのを見た気がした。
その後、血にまみれた包丁を持っている怪しげな男が峠で捕まり、庄屋の姑に職を解かれた者が恨んでの犯行だと分かった。
姑はその責を問われ、庄屋では表だって仕切ることは無くなった。
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