百の手

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「言われた通りに百の手を貸してきた。これで約束は守ったぞ」 「ああ、ありがとうよ。おかげで助かった」  山の頂上で待っていた坊主は、前の時と打って変わって、しわがれて張りの無くなった声で返事をする。  報告する為に坊主の元へやってきた鬼神は、坊主の老け具合に驚いた。人間はすぐに歳を取るのだと実感した。 「それじゃ、これで俺の役目は終わったな」 「ふむ、さてどうかな?」  立ち去ろうとした鬼神に、坊主は言葉を返した。 「はて、儂は『月野木家の赤ん坊に百の手を貸してくれ』と言ったはずだ」 「ああ、だからそうしたはずだが……」
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