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それから数百年が経った。
「この子に百の手を貸してください」
家の中の小さな神棚に向かって妊婦が祈りを捧げていた。
「『百の手』ってなんだ?」
夫が訝しそうに訊ねた。
「うちの守り神様がね。生まれてくる赤ちゃんに百回だけ手助けしてくれるっていう言い伝えがあるの」
「へぇ、おもしろいね」
「だらね、こうやってお願いしてるんだ」
丁寧にお供えを並べる妊婦は、家に古くから伝わる鬼神の話をした。
「でもまぁ、言い伝えだろう?」
「うん、でも小さい頃チラっと見たことがあるのよ。白装束の赤い鬼が家を覗きこんでるのを……」
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