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坊主に教えてもらった案内を頼りに行くと、山間にある村に、その月野木家の家はあった。
家の外では、臨月を迎えた腹で痩せた嫁が家事を切り盛りしている。身重の体では中々大変な様子だ。
だが、鬼神は手を貸そうとしない。家の柿の木の上からじっと様子を見ているだけである。坊主に使役される際、『生まれる赤子の危ない時』にのみ手を貸すことになっている。少々危うげなぐらいでは手を貸さない。
「やれやれ、釜すら満足に持つことも出来ぬではないか」
鬼神の言う通り、嫁が米を炊く釜を汗だくになって井戸に持っていくのが見える。大方、今日の分の飯を、お櫃に入れた後洗うところなのであろう。
「これ、おつるや。先に膳を並べんか」
家の中から老婆の声がした。
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