泥だらけの僕ら

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「ほんとだ、この猫すっげーなつくんだ。」 「うん。」 「あの……俺、菅野涼介。なんて名前?」 「スガノ?あはは、おんなじ。」 「うそ、菅野なの、苗字。」 「うん。菅野広海」 「やべ、親戚かもな。」 「ははは、いっぱいいるでしょ。スガノ。」 「まーな。でもなんか嬉しいな。涼介って呼んで。えっと…広海。いや、ひろ……ああ、うみがいい。誰も呼ばなそうで。うみ。……てか、なんか顔赤くなってきてる。」 「ちょっと恥ずかしい。」 「恥ずかしがるなって、うみ。はい………」 「りょーすけ……」 「……あ、恥ずかしいわ、確かに。」 「ちょっと!」 「ははは、嘘だよ。うみ、うみ、うみ。」 「やめてよ。」 「よろしくな。」 「……うん。」 「……俺さ、これからもう予備校行くんだけど。いつもここにいる?うち親がうるさくて、あんまり外にいられないんだけど……」 「そっか。うちも……」 「今度どっか別のとこで会おう。携帯は……」 「ないんだ。」 「じゃあ、また会えたときに、どっか探そう。」 「そうだね。」 「じゃ……俺、いくね。」 「いってらっしゃい。」 「また会おうな。うみ。」 「うん、また会おうね。……りょーすけ。」 あたたかな春の道を、小走りで駆けていく。嬉しそうな顔をこらえられなくて、誰かに見られたくなかった。ひろうみ。うみ。……うん、やっぱりうみって感じだ。 それにしても俺、あんなペラペラ喋ったことねえのに。俺こそけっこう恥ずかしい。 でも、うみ。女子だったらよかった。なんかすごく好きなタイプだ。人生うまくいかねーな。 でも、うみ、知り合えてよかった。あんまり会えなそうだけど、またすぐに会えたらいいな。 ああ、きょうはあったかい。来年のことばっか考えてるけど、きょうのことはきっと忘れない気がする。うみ、会えてよかった。ほんとに、何故か、いま嬉しくて仕方ないんだ。何故かわからないけど、嬉しくて嬉しくてたまらない。 うみ、きっとまたすぐに会えますように。
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