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「うーん。やっぱりコレ、難しいみたいだね。ドラム缶だけならできそうだけど」
そう言うや守流は颯爽とドラム缶に飛び乗り、
「よっ、ほっ、おっとと」
絶妙なバランスでドラム缶を転がし、ゴールへ進んでいきます。それを見ていた一同は口々に言いました。
「前から思ってたけど、すげーよな村瀬」
「うん。あの運動神経、普通じゃないよ」
「絶対なんかのスポーツやってるって」
こそこそ話すみんなに気づいた守流は、ドラム缶から降りると照れ臭そうに打ち明けました。
「みんなには言ってなかったんだけどさ……。僕、サーカスの団員なんだよね」
まさかの事実に、誰もが驚きを隠せませんでした。
「サーカス団員? マジかよ!」
「そう言えば最近、この町にサーカス来てたっけな」
「道理でなんでもできるはずだよ」
みんな羨望の眼差しを守流に向けています。そんな中、恭也は一人、ふつふつと怒りがこみ上げていました。
(……サーカス団員だと? ふざけるな。もっと早く言えよ。そうと分かってたらお前なんか誘わなかったのに)
そして、ひとつの疑念が頭に過ぎります。
(まさか、今俺に競技をやらせたのも、できないのを知っててわざと……)
恭也はガァンとドラム缶を蹴りつけると、みんなに背を向け走り去って行くのでした。
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