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「ところでさ、番堂君は自分で考えた競技、できるんだよね?」
守流の何気ない発言により、周囲の目が恭也に向けられます。
「え……そりゃーまぁ……」
「だよね。なんたってお金を賭けてるわけだから、ちゃんと自分でリハーサルしてクリアしているのは当然だよね」
「あ、ああ。当然だろ」
「じゃあさ」
次の守流の言葉に、恭也の頭は真っ白になります。
「今回の“ドラム缶バーテンダー”、お手本を見せてよ。僕、ちょっと自信無いんだ」
ドラム缶バーテンダーとは、横たわったドラム缶の上に乗り、お盆に乗せた水をこぼさないようにゴールまで運ぶという、相当なバランス感覚を必要とする競技であります。
もちろん恭也はクリアもしてなければリハーサルすらもしていません。競技はいつもその日の思いつきで行われるのです。
「いやその、昨日はクリアしたんだが、今日はちょっと足を捻挫してて……」
「やだなぁ。今まで普通に歩いてたじゃん」
もはや言い逃れはできない。断ればみんなの反感を買い、今後この遊びをしてくれなくなるかもしれない。腹をくくった恭也は、水の入ったコップが乗ったお盆を手にし、ドラム缶の上に足をかけました。
そして直感します。あ、これ無理なやつだ――と。
「準備はいい? それじゃいくよ。ぶっ、ぶっ、ぶっ、ぶーん」
しかし今更後には引けません。守流のスタートの合図と同時に、恭也はやけくそ気味でドラム缶の上に飛び乗りました。が、
「あ、無理。ムリムリムリムリムリ!」
あっさりとドラム缶から落ち、頭から水を被るのでした。
「…………」
「大丈夫かい? 番堂君」
「や、やっぱ、足の調子が悪いな、はは……」
恐る恐る周囲の反応を伺うと、誰もが恭也に白い目を向けていました。
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