ある生ゴミによる腐敗的な非難

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 籠の横に無造作に置いてある肌色のそれへ、向けまいとしていた視線をようやく向ける。  どこからどう見ても裸の“人”である。  籠にしな垂れかかるようにして体を横たえているその人は、私が籠の前に立った瞬間から今この時に至るまで、微動だに一つしていない。  だらしなく放り出された足は二本ともつるりと滑らかで、産毛どころか毛穴も見当たらない。そのせいか、足の生え際で茂みを形成する一本一本の黒がやたらと濃く感ずる。  緩やかにくびれた腰の上部で膨らんでいる二つの球状の肉は、その中央に位置する輪から突起まで丸ごと外気に晒されており、ロングヘアの毛先が谷間にさらりと垂れ下がっていた。  炎天下の中じりじりと陽に焼かれ続けているであろう肌には、一滴の汗も滲んでいない。ただ、体内を通う血管の色が浮き出る程に透き通った色白の肌からは、色っぽさを感じるより先に不健康さが見て取れる。  加えて両手両足胴体の、あちらこちらは腐れてる。  白と緑のカビが粉を吹く付近の皮膚は、ぐじゅぐじゅと黒い水気を帯びていた。  髪の陰から顔の一部分が覗いている。  野次馬根性に背中を押されてそうっと顔をば覗いてみると、目鼻立ちも整っていてなかなか美麗な面立ちである。  勿体ない、とつい呟いた。
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