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しかし、
「……うっ――」
薄暗い洞窟の中、隠れていたゴブリンに隙を突かれ後頭部を棍棒で殴打されて気を失ってしまった。
気が付けば、手足は分厚い蔓で縛られ地面からドラゴンの牙の様に飛び出している鍾乳石に結ばれている。
「ぁ、あ……っ!?」
更に身に着けていた軽鎧の胸当てや篭手などは外されているばかりか、鎖帷子を仕込んだ上着は無残に裂かれて身を隠すのは殆ど下着程しかなかった。
当然、武器も奪われている。
「ゲェキャキャ」
松明を持ったゴブリンが、女冒険者が目を覚ましたのに気が付いて、汚い声で笑いながら近づいてくる。
「ひっ……やめて! 来ないで!」
醜い顔を近づけて、料理に口をつけるのが待ち遠しいように様に女の匂いを嗅ぐ。
冒険者がただのか弱い女になったのが余程、楽しいのかゴブリンは上機嫌で小躍りをしていた。それにつられて他のゴブリン達もゾロゾロと集まって来る。
「こ、こんなに……っ!」
数としてはざっと二十。巣を持つ群れとしては妥当な数だ。そして、軽装で駆け出しの冒険者が策も無しに勝てる筈もない物量でもある。
無謀だったのだ。これは当然の結果だ、と熟練冒険者は呆れるだろう。
「ぁ――そんな……」
絶望の中で女冒険者は、地面が小さく揺れるのを感じた。
その正体を感づいて、身体が震える。
「愚カダナ、冒険者ヨ」
片言の人語。
ゴブリン達の持つ松明の明かりでその姿が照らされた。
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