第一章 『蹂躙』

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第一章 『蹂躙』

   ――ゴブリン《小鬼》。    魔物と呼ばれる中で一番弱く、個体数と派生種の多い種だ。    基本的には緑色の肌をした人間の子供程の身長でだらしのない中年男性の様な体躯。  顔は簡潔に醜いに尽きる。近年では、モテない男性に『ゴブリンみたいな顔』と罵倒するのは侮辱罪に問われる程だ。    そして、その習性は醜悪で悪辣。  必要な物はなんであれ他から奪う。    無知ではあるが無能ではない。  手頃な木の枝を棍棒として振り回すが、冒険者の残した剣を拾えば“叩き付ける”のではなく“斬る”動作を学習する。  冒険者が弓を使う所を見れば、その使い方を覚える。  そして稀に、人語を理解し魔術を行使する個体が現れる程。    何より、繁殖力が異常に高い。村娘をさらい手込めにして数を増やす。    幼い少女や成人女性などは関係ない。子を孕む事が出来るのであれば問題はないのだ。ただ、若い女性が多く被害に遭うのはゴブリンの純粋な快楽の為。  ゴブリンの巣に討伐に行った女冒険者が襲われ、一か月後に保護された時には既に一匹を生んでいた、という話もある。  故にゴブリンは最弱であり最悪で、災厄。  世界各地の冒険者ギルドには常にゴブリン討伐の依頼が出ている程だ。  そして今日この時も、どこかの森にある洞窟へゴブリン討伐に、二十歳に満たない程の女冒険者が向かったのだ。
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