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目が覚めると、そこは知らない場所で、パパもママも居なくて、不安で泣きそうになった。
そんな私の前に現れたのが与助だった。
私よりもずっと年上だろう、日焼けなのか、褐色の肌の与助は、少し困った顔をしながらも、一生懸命に身振り手振りで私に色々な事を伝えてきた。
それはほとんど意味は分からなかったけど、怖い人ではないことだけは分かった。
そして与助は、私にヒスイという名をくれた。
家に押しかけてきた村の人達は、自分と違う姿形の私を、異形と言って、追い出そうとしたけれど、与助は私の姿形などには囚われずに、私を受け入れて守ってくれた。
その日から、私はごく自然な流れで、与助に心惹かれていった。そして与助と一緒に生活する事に、とても幸せを感じるようになった。
だけど、与助が漁に出て、長く家を空ける時、村の人達はここへ来て、私に石や物を投げつけた。
私は与助に心配を掛けたくなかったから、何も言わずに隠して来たけれど、今回はうっかり、額から流れる血を見られてしまった。
それでも私は何も言わなかった。ただ「会いたかった」と告げて笑った。与助を困らせたくはなかったから。
そんな私を見て、与助はどうしてか、涙をこぼして、そして私を強く抱き締めた。私はそれに応えるように、与助の背中に手を回して、それから見つめ合い、それから……。
私と与助の想いは同じものになっていて、私達は夫婦となった。
そして
私は与助の子供を授かった。
私は子供が生まれてくるまで、毎日のように祈った。
どうか、与助に似た黒髪で黒い瞳の子でありますように…。私に似ることがありませんように…。
生まれてくる子が苦しまないように、与助がこれ以上、村の人達と揉めないように。
私の願いが届いたのか
生まれてきた子は、黒髪で黒い瞳の女の子だった。
与助は
「俺に似た女の子より、翡翠に似た女の子を密かに期待してたんだけどな」
そんな事を言っていたけど、私は黒髪、黒い瞳だった事に心の底から安堵していた。
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