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崖に辿り着いた私の視界に、白装束の両手両足の自由を奪われた鶫の姿が、飛び込んできた。
そして、ぐったりとした鶫の体を、体格のいい男が担ぎ上げようとしていた。
私は悲鳴のような声を上げながら、鶫の元へと駆け出した。私を止めようとする、幾つもの村人の手を振り払って、私は鶫の肩を掴んで、その体を引き寄せて、そしてその体を、私の後を追ってきていた弥彦に向けて、突き放った。
弥彦が鶫の体を抱きとめたのと同時に、私は鶫を担ぎ上げようとしていた男に、後ろから肩を掴まれ、そのまま海へと放り込まれた…。
えっ……
私の体はふわりと宙に浮いた。そしてすぐに海へと落ちて行った。
崖の上で村長や村人達が、私の落ちて行く様を、嬉しそうに笑って見ていた…。
あなた達の方が、余程異形の化物だ…。
荒れる海の中
深く深く、沈んで行く
今度こそ海の泡となるのね
これで私
与助、あなたにまた会えるのかな?
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