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◇
「梅村さん、僕は嘘ついてるなんて思ってないからね」
吉村君。篠塚君の親友。
さっきの会話を聞いていたのかもしれない。
「そもそも篠塚がおかしいんだよ。何も勉強しないで100点なんて取れるはずない。梅村さんみたいに努力しないと」
私は本当のことを言いたくなるが、我慢する。
今言ってしまうと、築き上げてきたものが壊れてしまう。
「全然気にしてないよ。篠塚君は勉強の才能があるんだよ」
「それじゃ梅村さんは、勉強を続けられる才能があるね」
ここまで褒められても、嘘をついている罪悪感も湧いてこない。
私の感覚はとうの昔に麻痺してしまった。
「そういえば梅村さん、unit11っていう歌手知ってる?」
「知らないけど。それがどうしたの?」
「篠塚って普段どんな音楽聴いてるか全く言わないんだけどさ、この前スマホの画面見たらunit11って書いてあって。2人とも頭いいから同じの聴いてたりすんのかなーって」
また今度調べとく、と言って私は吉村君と別れる。
家に向かう帰り道。
私はふと、メロンソーダが飲みたいと思った。
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