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◇
私には、吉村君が言うような才能なんてない。
あるのは、罪悪感も感じられない麻痺した心だけだ。
カラオケ店までは、歩いて20分ほど。
歩くには遠いけど、自転車に乗るほどでもない、そんな距離。
今の私は、そのどちらでもなく、走ってそこに向かっている。
影が伸びていく。
夕方。高校生が1番自由になれる時間。
私は、一旦止まってスマホをポケットから取り出す。
走りながらスマホなんて危険なことは、私にはできない。
さっき開いていたツイッター。
篠塚君のアイコンをタップして、篠塚君のツイートを遡る。
私の中でざわざわと嫌な予感が滲み出す。
そしてその予感は的中した。
『前日だけど、カラオケなう』
写真付きでのツイート。
日付はテスト前日と一致していた。
篠塚君は、テスト前日にカラオケに来ている私の姿を見たのかもしれない。
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