22人が本棚に入れています
本棚に追加
日下健から大黒麻衣への手紙
警察庁特別捜査部関西ブロック捜査員
大黒麻衣様
拝啓
手紙読みました。麻衣ちゃんに心配かけてすみません。
麻衣ちゃんにハッキリ話しておきます。
プロポーズしたのって一回だけです。
幼馴染の麻衣ちゃんにだけです。
四歳年上の麻衣ちゃんとは、小さいときからいつも一緒でした。
遊ぶときだって、勉強するときだって・・・
自分からぼくの家庭教師してくれた。
麻衣ちゃんと離れ離れになる毎日なんて考えられなかった。
僕が中学一年。麻衣ちゃんが高校一年のときだった。
麻衣ちゃんが大阪に引っ越すって聞いたときは、ぼく、目の前が真っ暗になりました。
だけど、離れ離れのままなんてぜったいイヤだった。
心だけはずっと一緒でいたかった。
だからプロポーズしました。
本気でした。
「さよなら。元気で」
麻衣ちゃんが冷たく笑ったとき・・・相手にしてくれなかったとき・・・
ぼくに背中を向けて離れていったとき・・・
ぼく、なにもかも終わったって思いました。
ぼくは一緒にいたかった。
だけど麻衣ちゃんには迷惑なんだって分かりました。
大好きな人には、絶対成功して欲しい。幸せになって欲しい。
そう思って麻衣ちゃんのこと、忘れました。
それでも・・・
麻衣ちゃんが、ロンドンのスコットランドヤード大学に入学して、たった二年で卒業したって聞いたとき、すごく嬉しかったです。
でも麻衣ちゃん、自分からはなんにも教えてくれなかった・・・
母から聞いて知りました・・・
ぼく、梅花高校に入学して、一年上の月影サキ先輩に出会いました。
ショートカット、パッチリした目が鋭く光ってた。こわい笑いを浮かべてた。
すごく短いスカートを履いて、黒いハイソックスがよく似合ってました。宝石みたいに黒く鈍く光ってました。
かっこいいって思いました。じっと見ていました。
先輩からは「ガンつけてた」って言われました。襟首つかまれ脅されてパシリにさせられ、宿題をさせられました。
よく殴られたり蹴られたりしました。
最初のコメントを投稿しよう!