日下健から大黒麻衣への手紙

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日下健から大黒麻衣への手紙

警察庁特別捜査部関西ブロック捜査員            大黒麻衣(おおぐろまい)様 拝啓  手紙読みました。麻衣ちゃんに心配かけてすみません。  麻衣ちゃんにハッキリ話しておきます。  プロポーズしたのって一回だけです。  幼馴染の麻衣ちゃんにだけです。  四歳年上の麻衣ちゃんとは、小さいときからいつも一緒でした。  遊ぶときだって、勉強するときだって・・・  自分からぼくの家庭教師してくれた。  麻衣ちゃんと離れ離れになる毎日なんて考えられなかった。  僕が中学一年。麻衣ちゃんが高校一年のときだった。  麻衣ちゃんが大阪に引っ越すって聞いたときは、ぼく、目の前が真っ暗になりました。  だけど、離れ離れのままなんてぜったいイヤだった。  心だけはずっと一緒でいたかった。  だからプロポーズしました。  本気でした。  「さよなら。元気で」  麻衣ちゃんが冷たく笑ったとき・・・相手にしてくれなかったとき・・・  ぼくに背中を向けて離れていったとき・・・  ぼく、なにもかも終わったって思いました。  ぼくは一緒にいたかった。  だけど麻衣ちゃんには迷惑なんだって分かりました。  大好きな人には、絶対成功して欲しい。幸せになって欲しい。  そう思って麻衣ちゃんのこと、忘れました。  それでも・・・  麻衣ちゃんが、ロンドンのスコットランドヤード大学に入学して、たった二年で卒業したって聞いたとき、すごく嬉しかったです。  でも麻衣ちゃん、自分からはなんにも教えてくれなかった・・・  母から聞いて知りました・・・  ぼく、梅花高校(めいかこうこう)に入学して、一年上の月影(つきかげ)サキ先輩に出会いました。  ショートカット、パッチリした目が鋭く光ってた。こわい笑いを浮かべてた。  すごく短いスカートを履いて、黒いハイソックスがよく似合ってました。宝石みたいに黒く鈍く光ってました。  かっこいいって思いました。じっと見ていました。  先輩からは「ガンつけてた」って言われました。襟首つかまれ脅されてパシリにさせられ、宿題をさせられました。  よく殴られたり蹴られたりしました。
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