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名前の由来
モモちゃんは十歳の女の子です。
漢字だと『百子』と書きます。
「百歳まで元気で長生きするようにと、お母さんが考えたんだよ」
お父さんは小さなモモちゃんを膝に乗せ、よくそう話してくれました。
「お母さんは体が弱かったから。モモちゃんには元気に育ってほしいってお腹の中にいるころからそう願っていたんだよ」
お父さんは寂しそうに微笑みました。
病気がちだったお母さんはモモちゃんを生んでしばらくしてから天国へ旅立っていきました。
「前の家の庭にね、古い祠があったんだ。大家さんが言うにはどこか外国の神さまを祀ってあるって話だった。お母さんはその祠をきれいに掃除してね、毎朝ご飯とお水をお供えしていたんだ。ちょうどモモちゃんを妊娠していた頃でね。毎朝毎日、お腹の子が元気に生まれてきますように、百歳まで元気に長生きしますようにってお祈りしていたんだよ」
きっとお母さんはモモちゃんが大きくなるまで生きられないってわかっていたんだね。自分が見守れないから神様さまにお願いしたんだね。
そう言ってモモちゃんを抱きしめたお父さんは、モモちゃんが五歳の時に交通事故で死んでしまいました。
その後モモちゃんを引き取った父方のお祖母ちゃんも母方のお祖父ちゃんも伯父さんも叔母さんも、皆病気や不慮の事故で次々と亡くなりました。いつしか親戚たちはモモちゃんのことを薄気味悪く思うようになり、十歳になるころにはモモちゃんを引き取りたいと思う人はひとりもいませんでした。
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