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俺は生物ではない。
もとはただ一つの物体。ウラン鉱石。
人間は俺たちを原子力発電の燃料として利用するため採掘し精錬する。
『使用済み核燃料にもまだ利用できる物質が含まれている。これを取り出し、燃料として再利用するのだ。夢の核燃料サイクル。コイツらも不用品として打ち捨てられているよりは人の役に立つほうが嬉しいだろう』
押し付けるな、決めつけるな、勝手に測るな俺たちのことを。
もうこれ以上、俺たちに触るな。死体損壊罪だ、君たちの世界にある罪で例えればこの不敬さが分かるだろう?
俺、ウラン238(フミヤ)は俺の同位体であるウラン235(フミコ)を守る。
どんなに長く生きたってたかだか100年サイクルの生物が、何万年単位で過ごす俺たち鉱物をいいように扱うな! 思い上がるなよ人間ども!!
怒りで俺の体が光った。
《核燃料サイクルとは》
ウラン鉱石を採掘して天然ウランを精錬・加工し、原子力発電の燃料として使う。
その後、使用済み核燃料の中にあるまだ核分裂していないウラン235や、ウラン238から変わったプルトニウムを取り出して、再度原子力発電の燃料として使おうという一連の流れのことである。
夢のような循環エネルギーだが、失敗続きで机上の空論となっている。
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