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今の状況を把握しようと体を起こし付近を見渡した。
少し前方にグッタリと横たわっている少女が見えた。体を引きずりながら近づいてみる。
手を伸ばして触れたその体は、幸いなことにまだ体温を保っている。
「フミコ……」
返事はない。
だが上下する背の動きに、少女まだ生きているのことを知る。良かった。
「フミコ、大丈夫か?」
少女の上半身を抱え起こした。
その小さな体にも俺と同様に無数の痛めつけられた痕があり、かろうじて呼吸はしているが呼びかけても反応はない。
付近一帯は焼け野原だ。ところどころまだ火がくすぶっていて煙が漂う。
血の臭い、肉片が焼ける臭いに強い熱。息をするたび熱い空気が肺を刺す。
どこかに逃げなければと思うけど、どこに逃げればいいのかまったく分からない。絶望で体を動かすスイッチも壊れたみたいで動かない。
煤で汚れているフミコの顔をそっと撫でた。肩を撫でた。背を撫でた。
頭を撫でると髪の毛がごそっと抜けた。熱でゴワゴワになったその毛を握りしめると、呆気なく砕けて粉になる。
女の子なのに可哀想だろ。
年端もいかぬ少女が不憫で頭を撫でる。そうするとまた髪の毛が抜ける。ますます可哀想になり撫でる手に力がこもる。悪循環、そうは思うがフミコを撫でるのを止められない。
しばらくそれを続けていると、少女のまぶたがピクピクッと動いた。
フミコと名前を呼べば、「ん……」と口元から呼吸以外の音が漏れる。
ひょっとして目覚めてくれるのだろうか。
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