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「もう少し、安全なところに行くよ」
そう告げると彼女は一瞬泣き止んだ。そして子供のものとは思えぬ怒りをもった重い声で返してきたのだ。
「そんなとこ、どこにもない!!」
フミコを抱え、一歩歩き出そうとしたその瞬間、ドンっと背後の何かが爆ぜた。
爆風に吹き飛ばされた俺は無慈悲にもフミコを放り出してしまい、少女は数メートル先に投げ出された。
『取り出せ、取り出せ』
その時、天から不快な声が降る。
『使用済み?まだ使えるだろ。取り出して再利用だ』
「いやぁぁーっ!!」
フミコの叫び声が響く。
見ればどこから現れたのか分からないが、蛇のような細い触手が数十本、彼女の体に絡みつき連れ去ろうとしている。
「助けてぇー、フミヤぁぁ!!」
見えない目を見開き、手足をどうにか振り回して暴れる少女。考える暇なんてなかった。
「フミコっ!!」
爆風に飛ばされた痛みなんて感じない。ただフミコを助けなければの一心で体が動いた。
少女に駆け寄り触手を外す。
その一本一本は脆く簡単に千切れるのだが、問題は数だ。千切れたそばからすぐ新しい触手が沸き出てきて、俺をはじき彼女を掴む。
「やだぁ……や、だ。いたぃ痛い痛いっっあああああ!!」
触手はフミコの首・四肢・体幹全てに絡みつき、自由を奪った。
どうにか助けようと俺ももがくがどうにもならない。俺の体にも足止めのように触手は絡みつき、ついには地面に転がされてしまった。
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