100年サイクル

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「やめて、たすけて、たすけてぇ、死んじゃう、あああああっっ!!」  触手は一本一本その身を伸ばし繋がって、天に突き上げるような槍を作った。その先端にフミコ。まるで神に捧げる生贄のようだ。  そして天が裂けた。  形容しがたい不快な大音が響き、青い空に突然稲光のようなヒビが入った。雷光と違うのはそのヒビが真っ黒だったこと。最初は線、その黒い線がだんだんと太くなってゆき、ギギギギギギギギと無理やり何かを壊すような音とともに空の一部分がバカッと裂けた。  あれは闇だ、そう思った瞬間「ギャアァァァァ」と聞こえてくる断末魔の悲鳴。  フミコ!!    地べたに転がされた俺からはもう手の届かない、はるか向こうに見えた光景。  触手の先端にいたフミコ。  天が裂け闇が現れると触手はそこをめがけて体を伸ばし、割れ目にフミコを押し込んだ。 「ギャアァァァァ」という悲鳴は一秒も保たず、すぐに聞こえなくなった。  フミコを吸い込み、天は満足したらしい。  裂け目は合わさり闇はだんだん収縮していく。面から線へ、最後は糸のように細くなり、そしてその糸も青空に溶けるように消えていった。
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