for o'clock -黄昏-

2/4
前へ
/4ページ
次へ
 …何者かが、私の右腕を引っ張っている。    振り返ると、植物のツルみたいなのが待ってと言わんばかりに私の腕と、指にまで絡み付いていた。一体いつこんなに絡まってしまったのだろうか。ツルはすぐ目の前のオシロイバナの方から伸びている様だった。 「…なに?君も私と別れたくないの?巻き付く場所を間違えている…よ?」  締め付けはとても弱々しいのに引っ張っても、左手でツルを掴んで力を込めてもほどける気配がない。私を絡めとる緑のリボンは、次々に伸びて私の腕を包んでいく。どういう訳か、全く力が入らず抵抗すらできない。 「ちょ、ちょっと。なに?なにをする気なの!?」    流石に怖くなり、逃げ様としたが直ぐ様倒れこんでしまう。さっきまで無かったはずのツルが両足首にも巻き付いていた。やはり目の前の花株から伸びている様で、抵抗ができなくなった私を少しずつではあるけど、引きずり混もうとしているのが草のザワザワとした音と感触で分かった。 「くっ、うううぅ。嫌だ、離して!!離してよ!!私を食べても美味しくないってば!!」  オシロイバナという植物がどんな物であれ、人を襲う植物なんて聞いたことない。理由は分からないけど、生物としての直感なのか、このままではきっと食べられてしまうだろうという嫌な予感がした。恐怖心から必死に抵抗するけど、奮闘虚しく私は青々と茂る葉の下にズルズルと連れ去られてしまった。  一体この植物のどこに人一人分を覆い隠せる程のスペースがあっただろうかと思う程、誘拐された私は全身を葉っぱや枝に覆われていた。四肢をツルで固定され身動きができない私を、緑色の物体が素肌をさらしている箇所をチクチクと痛みつける。徐々に痒みが増してくるも、手を動かせない私は少しでも和らげようと体をくねらすことしかできずにいた。しばらくするとそれもできなくなり、ピクピクと身体を震わすことしかできなくなった。恐らくこの草には毒があり、体を動かせないのはそのせいなのだろうと思った。 「やだ、痒いよぅ…一体、何が目的なの?私をどうするつもりなの?」  あまりに理解不能で非現実な出来事に、恐怖心で一杯な私は、不本意にもアソコがしっとりと濡れていくのを感じた。さっきの男に傷つけたのがまだ癒えてないのか、沁みて痛いが抑えることもできない。するとその潮の匂いを嗅ぎ付けてか、外に向かって咲いていた花達が一斉にこちらに向き始めた。服は着たままというものの、目は無いはずなのに花達に視姦されている様で、羞恥心が燻り始める。 「いやぁ。そんなにジロジロ見ないでよ。見たって何も無いでしょ?」  問いかけるも返事は帰ってこなかった。相手は植物なのだから当たり前なのだけれど。変わりに返ってきたのは、私を縛り付けるものと同じ一本のツタだった。シュルシュルとスムーズに伸びていくそれは、私の股まで躊躇いもせずに向かってきて、服もろともショーツに手をかけた。私は為す術もなく、無抵抗のまま下半身を脱がされ秘部を露にされた。 「嫌…やだ。止めてよ、恥ずかしいよ…何をするつもりなの?」  泣き言を漏らしつつも、私は既にこの花に犯されるのだろうと現実的にはあり得ない結論に至っていた。恐らく私の愛液、植物側から言えば養分を求めているのだろうなと勝手に想像した。でなければこんなことはしないはずだ。  私はこの花の側で数えきれない程の男と体を合わせてきた。その度に花は私の一部始終を見届け、こぼれ落ちる蜜を一滴残らず吸い続けた。本来なら雨や太陽の光等の自然からの恵みを無心に享受するだけの存在なのに、この花は私の淫らな毒を吸い続けていたのだ。そのせいでこの様な人を襲う様な怪物に変わってしまったのかもしれない。  そうだ。きっとそうに違いない。これは私のせいなんだ。自業自得。淫らな私がこの花に犯されるのは、極めて自然なことなんだ…  恐怖心から逃れるためか自暴自棄な現実逃避をしていると、私のアソコにはいつの間にかツルではなく、数ある花の一つが当てがわられていた。何か数本の細い糸みたいな物が膣壁に当たりゆっくりとしたぎこちない動きで軽く引っ掻いていく。 「あうぅ!!ちょっと。くすぐったいよぉ!!」  数回引っ掻くと花は私から離れて萎んでいく。そして次の花がまたこちらに向かってくる。よく見ると花の中に六本の細い管があり、一本を除いて黄色いぶつぶつの団子みたいなのが先端に付いていた。私はそれが花粉であり、私に入れられているのは雄しべ、つまり植物の男根であることを瞬時に理解してしまった。 「あ、あぁ。ひぃやぁ…わたしはお花じゃないよ。つけるとこ、あっあぁ、まちがえてるよお。」  私の言い分をものともせずに、再度雄しべが陰部の奥に入っていく。先程の花と同じ様にぎこちない動きで花粉を膣に擦り付けていくが、優しく引っ掻かれる感触の他に花粉のザラザラ感が加わり、私を詰め将棋の如くジワジワと絶頂へと追い込んでいく。 「あうぅ…あ、はうぅ…だめぇ、アソコ、カリカリしないで。あんっ!!気持ち…いいの…」  全ての花粉を馴染まされ、役目を終えた花は忽ち引き抜かれ萎んでいく。しかし、次の花が既に控えており間髪入れずに一糸乱れぬ性行為に及ばされてしまう。そのあまりに非力な愛撫に私は身悶えする他なく、5輪目に差し掛かった時には限界を迎えてしまった。 「ああぁ、もうだめぇ!!来ちゃうぅ。イク…イクぅ…」  お腹の辺りがきゅうと締まると同時に一瞬意識が真っ白に染まる。身体が熱と、今までで感じたことの無い幸福感に包まれて、歓びの対価として養分を吹き出してしまう。葉の間から微かに漏れる月明かりが黄金色の微粒子を含んだ愛液をてらてらと照らし、股をつたって緑の大地へと降り注いでいく。命の恵みに歓喜したのか、それともまだ食い足りないのか、オシロイバナは一度に二輪の花を私に向けてきた。一つはいつも通り私の中に。もう一つは私の外。はち切れそうな程勃起した私の小さな蕾に覆い被さってきた。 「あ!!ああぁあぁ!!ダメ!!そこ!!だみぇだってばぁ!!」  イったばかりな上に、一番弱いとこも引っ掻かれて耐えられるはずがなく、私は矯声を上げてしまう。秘豆に向けられるソフトタッチ以下の優しい雄しべの接触は、まるで受粉そのもので、蕾を花開かせようとする天使の愛撫を思わせた。それほどの快感なのだから、私が再び頂きに登り詰めるのにそう時間はかからなかった。 「うあぁあっあ!!だめぇ!!またイっちゃう、イクぅうぅー!!」  大きな絶頂と共に、子宮が握りつぶされているかの様にぎゅうぎゅう萎縮する快感が全身を駆け巡る。乳絞りみたいに盛大に潮を吹き出し、止まることなくダラダラと溢れる。余りの快感に壊れてしまったのかもしれない。恵みの雨は濁流へと変わり果てるが、広大な緑の大地の前では吸い切れなかったものが、小さな水溜まりを作るだけに過ぎなかった。それでもこの花は相当な悪食なのか、何も変わらず次の新鮮な花を私に向けてくる…
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加