for o'clock -黄昏-

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 二回目の絶頂から一体どれ程の時間が経ったのだろうか。もう何輪目か分からない程、私は中も外もこの花達に子種を植え付けられ、達してしまった。蛇口はとうの昔に壊されてしまい、雌穴からは絶頂具合に関わらずポタポタと絶え間なく水を漏れ続けた。 「あ…うう…きもち、い…」  こそばゆい愛撫にすっかり骨抜きにされてしまった私は快感に身を任せ、身体を震わせ涎を垂らしながらひたすら虚空を見つめ続けていた。木漏れ日の様な月明かりはすでに無くなっていることから、相当長い時間犯されていることが伺えた。この次で交尾は終わるのだろうか。それとも一生このまま悦に浸り続けるのだろうか… 「う、あぁ…また、イちゃうぅ…」  何度目か分からない絶頂でまたもや愛液をダラダラと溢してしまう。もはや尿かと疑う程花粉で真っ黄色に染まったそれは、子宮の奥まで花粉が詰め込まれてしまった何よりの証拠だった。  度重なる凌辱に疲れきった私だったが、不思議と心は幸福感で満たされていた。他生物とはいえ、私の人生の中で体を一切傷付けることなくイカせてくれたのはこの花だけであった。そもそもあれだけ男共と交わってきたのに、ここまで身体が快楽で一杯になること自体初めてのことだった。犯された身のはずなのに、私はこの終始優しく接してくれたオシロイバナに深い愛情を募らす様になってしまっていた。例えそれがこの花の毒による錯覚だとしても構わなかった。  だけど、そんな歪な幸せの時間も終わりを告げようとしていた。花達が向かってこなくなり、次々に萎れていく。どうしたことかと霞む視界で辺りを見渡すと、空がいつの間にか白んでいることに気づいた。 「い、嫌。待って。まだ、足りない。あれが足りないのに。枯れちゃやだ!!一人にしないで!!」  私の懇願をよそに花は忽ち元気をなくし、遂には全ての花が枯れてしまった。終始巻き付いていたツタも力なくほどけ、後には私と凛とした肌寒い朝の空気だけが残された。きっとこの花も迫りくる冬の気配に、限界寸前だったのだろう。それでも最後の夜を私と共に過ごし、栄養を自分に使わず蓄えて、未来の花達に託したのだ。そう思うと私は涙が溢れて止まらなくなり、自然と「最後の時を一緒に過ごしてくれてありがとう。」と呟いていた。  止めどなく溢れる涙は地に落ちるも、私の悲しみと同じ様に一滴も消えることはなかった…
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