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マエストロ
「さあ、マエストロ!あなたの実力を見せて下さい!ぜひご主人様の100歳の誕生日に華をそえていただきたい!」
そう言う甲高いむかつく声で目が覚めたんだ。音程が悪い。極めて耳に不快な声だ。
それもそのはず。指揮者の俺を拉致して椅子にくくりつけて、謎の地下室に閉じ込めるような奴らだ。どう考えたって不快になる。
「私は執事をつとめております。本日は、マエストロを招待させていただきました」
高い天井近くのスピーカーから、せせら笑いで自己紹介をかましてくる執事を名乗る男。
椅子にくくりつけられた俺を見下ろしてるわけだな。まったく感じ悪い野郎だ。
金持ちは人の迷惑をまったくかえりみないよな。だから嫌なんだ。
「おいおい、どこの執事さんか知らねえが、いきなり人を拉致しておいて、華をそえろなんて命令は失礼なんじゃねえか?」
俺は自力で縄をほどいて、椅子から立ち上がった。薄気味悪い執事は、こう答える。
「これはこれは、さすがマエストロ!ご主人様がザイム100の1員であることを知りながらそんなことを言えるんでしょうね?生かされているということをご理解いただきたい!」
そのくそみてえな紹介とともに、ご主人様らしきじじいが自己紹介を始めるんだ。
「ワシがおぬしを招待してやったザイム100の者じゃ。殺されていないだけラッキーだと思うがいい。ほっほっほ」
「何がザイム100だ。知るわけがねえ。早く俺をこの湿った陰気な地下室から出してもらいたいもんだね」
俺が正直に答えてやったら、じじいは薄気味悪い声で笑う。まったく不快な音程を響かせてくれる。
「ほっほっほ、マエストロよ、威勢がいいな。ザイム100とは、夢のような財力で罪すら無にできるほどの力を持つ選ばれし富豪100人のこと。ワシの命令で、おぬしを殺して死体を跡形もなく片付けることもできるのじゃよ。だが私は優しいので、おぬしにチャンスをやる。見事、これからやってくる刺客100人を倒したら、解放して賞金100万円を副賞としてプレゼントしよう」
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