ちょっと100人トってきます。

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ちょっと100人トってきます。

「お、若僧。どないしたん」 「私は、若頭さんから、手紙を預かっただけです」 「は?だけってなんや、だけって!」 「あ、すいません」 「『すいません』なんかで終わると思うたら違うで、土下座や土下座!」七助が激昂すると、 「落ち着け、七助」義二が救済に入った。 「…すまん、義二」 「んで、手紙の内容は何だ?十米(とめ)」義二は続けた。 「それが、どうも訳が分からないのです」 「どういうことだ。読んでみろ」 「はい。えぇ、『I、z、u…」 「何や?あんたローマ字も読めへんのか?いい加減にせえよ!」七助が怒り心頭になったが、 「そんなに怒るなら、七助、お前が読め」と助け舟を出した。 「…十米、その紙、俺に貸せ」と言いつつ、手紙を引ったくって、七助は続けた。 「『伊豆組は、我々三河組にとって、いわば目の上のたんこぶ、いずれ排除しなければなろない存在…』」 「七助、噛んだか?」 「いえ、ここに書いとるので」 「何て?」 「エル、オーです」 「きっと、ならないと書きたかったんだろう。『lo』で『ら』と読ませるんだろう」義二は韻を踏んで喋ったのだが、 「なるほど、分かりました」と、あっさり返されたので、少し落ち込んでいた。 「では、読み直します。『排除しなければならない存在である。伊豆組ぎるとき…」 「七助、ちょっと待て」義二が割って入った。 「何ですか?」 「伊豆組『ぎる』って何だ?まさか、『切る』わけではないだろ」 「…すいません」 「多分、『伊豆組がいるとき』じゃないですか?」十米が話に入ってきた。 「まあ、そうだな」義二は納得した。 「そしたら七助、続けろ」 「はい。『伊豆組がいるとき、我々に明るい未来は待っていない。しかし、相手は中々隙を見せない。そこで、伊豆組の者を誘拐すればいい。やつらが百人いれば我々の勝利の日は近い。この一件で、我々の命運は左右される。皆の者、頼んだぞ』とあります」 「そうか。それなら、他の兄貴にも手伝ってもらわないとな」 「義二さん、一ついいですか?」 「どうした、十米」 「何で百人も誘拐しなければいけないのですか」 「まず、俺たち三河組と伊豆組が、本当に仲が悪いことは知っているか?」 「…すいません。覚えていないです」 「そら、十米なら分からんやろ。伊豆組と俺らは犬猿の仲だ、ってことなんか」七助がちょっかいを出した。 「…勉強不足ですみません!」 「大丈夫、これから覚えていけ」やはり義二は大人の対応が出来る。 「は、はい!」 「返事だけやないならええけどな」 「こいつはそんな奴じゃないぜ。きっと若頭レベルにはなるな」という義二の一言で、十米は、顔を赤らめていた。 「…話を戻そう。俺らと伊豆組は互いに嫌っている。だが、伊豆の奴等は慎重で、手を出す理由が全く見つからない。だが、俺も詳細は知らないが、三河組が新たな強力兵器を手に入れたらしい。なので、このビルに籠城していれば、必ず伊豆組を潰せる。そう上が思ったんだろう。だから、上は攻めてきて欲しいんだろう。だから、百人ぐらい誘拐しなきゃ動かないと判断したんだろう」 「なるほど、分かりました」 「それでは、行こうか!」義二の合図に、 「「うす!」」大声で、七助と十米、その他大勢の下っ端が応えた。 為之(ためゆき)は、呆然としていた。この三河組の人は、なんで、揃いに揃って馬鹿ばっかなのか。まあ、これで、任務も一区切り、単身赴任と嘘をついていた妻の元に、やっと帰れる。それでも、こんなにあっさりと三河組を弱体化出来るなんて。 余りにも長く、呆気ない一日だった。 三河組若頭の為之は、恐ろしい程短気な組頭と話をしていた。 「伊豆組の野郎を、さッさとサツに送り込みてェな。どうすりャいいンだよ!」こんな調子ではあるが、組頭は別に怒ってはいない。むしろ機嫌がいい方だ。 「朝の占い、俺のがいいからなァ、今日のうちじャねェのか?」なんだ、そんな理由か。 「いや、オレの運勢悪いんで、今日はダメじゃないですか?」専務が何故か乗っかってきた。そういえば、組頭と専務の誕生日、一緒だった筈だ。 「そしたらさ、程々のときでいいと思う」副組頭まで参加する有様だ。そんな時は多分無い、そう為之は思った。 「お前らはどうだァ?良い案あるかァ?あ、もちろん、被害はァ、少なめで頼むぞォ」 「…いいですか」 「お、為之かァ、言ッてみろ!」 「組頭の敬愛する徳川家康公の孫、徳川家光公に倣い、人質を取るのは如何でしょう」 「ン?家光公ッて、人質、取ッてたッけ?」 「はい。大名の妻と息子を江戸に預けてました」 「…そうだッたッけ?まァ、いいや」胡麻塩頭を掻きながら、組頭は話を続けた。 「…つまりィ、どうすンの?」 「伊豆組の幹部クラスを数名、拉致します」 「ンで、そッから?」 「向こう側の機密情報を吐かせます。そして、身代金を巻き上げれば、伊豆組は経営困難になります」 「まァ、そうだなァ」 「そんなに上手くいく?」副組頭が聞いてきた。 「そうとは限りません。しかし、伊豆組は明日、上部暴力団である南錠組との会合で、一日中、守りは手薄だそうです」 「じャあ、二、三人なら奪えるッてことかァ?」 「そうですね」 「…わかッた。その件はァ、為之に任せる。いいなァ?」 「うっす!」総員が威勢よく返事をした。 そして、子分を活用して、伊豆組の者をlog100程、誘拐させた。もちろん、常用対数だ。 Izukumiha wareware mikawakumi nitotte iwaba menoueno tankobu izure haijyo sinakereba nalonai sonzai dearu Izukumigirutoki warewareni akarui miraiha matteinai Sikasi aiteha nakanaka sukiwo misenai Sokode izukumino monowo yuukai surebaii Yatulog 100 ninn ireba warewareno syourino hiha tikai Kono ikkende warewareno meiunha sayuusareru Minanomono tanondazo 為之は、子分たちが真面目に百人誘拐するのを微かに期待していた。そして、それは現実に起きた。 まず彼らは、この大プロジェクトのまとめ役を、手紙を出した俺に頼んできた。 そこで、俺は実際に百人誘拐することを知り、他の重役も連れていけばいい、と提案した。そして、副組長だったり他の若頭だったりも参加させていた。 伊豆組の建物内に入った彼らを、俺たちは捕まえた。ちなみに、伊豆組は、三河組を倒すために、俺たち警察と協力している。 三河組の人たちには、『伊豆組に捕まった』と連絡しておく。 俺も捕まった設定なので、やっと我が家に帰れる。
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