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「海斗を保護してくれてありがとう」
――保護?
「はあ?」
徹さんに抱きついたまま、顔をバッと上げる。
「保護ってどうゆうこと?」
俺の形相に徹さんは苦笑いしてる。
「携帯のGPSで公園にいることがわかったから、優海君に頼んだんだよ。いくら七月だからって野宿は危険だ。変質者がうろついてるかもしれないからね」
「え、……だって、出張……は」
優海へ目を向けると、優海が「てへ」とベロを出した。
「ごめん、兄ちゃん。兄ちゃんの一大事やて康介さんにいうたら、ビジネスホテルに泊まってくれはってん。兄弟水入らずがいいでしょって。康介さんに、もう帰ってきてええよって連絡すんね?」
「……まさみぃ~」
脱力感と共に、魂が抜けだすような声が出た。徹さんを見上げると、ニコッと微笑み「怒らないでくれ」と眉を下げる。
「大丈夫、怒らんよ。怒らんけど、俺めちゃめちゃ情けない」
「海斗はまだ若いんだから、情けない時があっていいんだよ」
徹さんは慈愛の篭った眼差しで俺と優海を交互に見た。
「今までずっと守る立場だったんだから、守られる時があってもいいだろ?」
俺は言葉の意味を噛み締め、唇を結び「うん」と深く頷いた。そんで、優海へ視線を向ける。
「優海、ありがとう! んで、早う電話し? 俺の為に」
「うん!」
ニコニコと頷いて、優海が携帯を耳に当てる。
「早よ帰りたいけど、迷惑かけたし。梶田さんにもちゃんとお礼言わなな」
徹さんを見上げ言うと、徹さんがポケットから黒いカードを取り出した。
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