もやもや

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 徹さんの家に居候するようになって一週間。今日はいよいよディズニーの面接の日。  午後一時から面接予定。キャスティングセンターの前園さんから電話があった翌日、新しい携帯の方へ丁寧なメールも送られてきた。今までこんな丁寧な対応されたことないで。  駅から電車の乗り換え入れて二十三分。最寄りのJR舞浜駅から東京ディズニーランドまでは、徒歩で約七分や。 「海斗、良かったらこれを着てみて?」  顔を洗っていると、徹さんからショップの紙袋を渡された。  もしかして、面接用に服まで用意してくれたん? 「採用は問題なくされるとは思うが」 「わあ、ありがとうございます。何から何まで、ホンマ助かります」  袋の中を開けてみると、入ってたのはスキニータイプの黒色のパンツ。爽やかな空色のボタンシャツに、キャメル色のジャケット。靴下と革靴まで入っている。どれもしっかりした生地つこてあって、小綺麗や。 「面接会場まで送ってやりたいが、通勤のために慣れておいた方がいいだろう」 「そんな、そんな、もう十分ですよ! ってか、ホンマにありがとう」  徹さんの温かさに、酔いしれるみたいに徹さんを眺めた。  こんなええ人、俺出会ったことない。 「じゃあ気をつけて。あ、そうだ」  徹さんが手のひらに乗せたものを差し出す。ポイントカードくらいの大きさの真っ黒なカード。なんにも書いていない。 「これは?」 「カードキーだよ。面接が終わったら部屋に入るのに必要だろ」 「合鍵ゆーやつですね」  徹さんがニコッと微笑んだ。カードキーを受け取り、持ち上げ見せた。 「預からさせてもらいます」 「持ってていい。財布に入るサイズだから邪魔にはならないと思う」 「うん! 大事にします」
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