もやもや

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 緊張の面接も無事に終わり、なんとその場で採用が決定。現在勤めてるバイトを今月いっぱいで辞めて、来月からディズニーキャストとしての研修が決まった。  これもひとえに徹さんのおかげ。徹さんと出会ってから俺の運気はガラリといい方に転がった。まるで神様のような人や。  さっそくその日、事情を店に話すことにした。マンションに戻り着替えて、バイト先へ出かける。  徹さんにメッセージを送ると、「おめでとう」と一緒に仕事が終わったらバイト先まで迎えに行くと返事がきていた。 「もぉ~、ホンマ優し過ぎやわぁ」  一人でデレデレとニヤケながら「待ってる」とメッセージを返した。  店に着いて、早速マネージャーさんに話したら、「良かったな! でも、寂しくなるね。頑張ってね」と快く承諾してくれた。俺がキャストになりたい話はみんなわかってるから一緒に喜んでくれる。  マネージャーが去って、ヒロ君にも徹さんの事を含め話した。 「それってさ、やっぱそのセレブのお陰だよね」  もちろんその通り。 「ヒロ君のおかげやな。俺の運命の神様と巡り合わせてくれたんやから」 「ふーん。じゃあ俺に感謝しなきゃ」  冗談ぽい口調で言ってたけど、あんまり顔は笑ってなかった。徹さんのこと紹介せーへんからいじけとるんやろうか。俺は調子に乗らないよう、ヒロ君に感謝の言葉を何度も伝えた。  その日は平日なのにも関わらず、店はずっと賑わっていた。あと三十分で十二時。ラストオーダーを確認しているとヒロ君が背後にやってきた。 「ごめん。今日先にあがるね」 「え、あ、うん」  まいったな、迎えに来てくれるって言ってくれたのに。ちゃんと就業時間に帰ってよ~と思いながらヒロ君を見送った。
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