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ええなぁ、俺ももう帰りたい。
十二時を少し回り、ラストのお客がはける。残ったグラスを洗ってるとオーナーが「もういいよ」と声を掛けてくれた。
「すいません。ほな、お先上がらせてもらいます」
オーナーに会釈して早々にロッカーへ向かった。「はよはよ」と自分を急かしながら着替え、エレベーターに駆け込み、ビルを出た。
徹さんどこやろ?
キョロキョロと辺りを見回せば、道路にハザードを焚いて停まっている車を見つけホッとする。徹さんの車や。駆け寄るにつれ気づく。
なんやろ? 様子がおかしない?
フロントガラスに見えたのは運転席側の人影。
やけど……後頭部。
目を細めよく見る。どう見ても後ろ姿。運転席に跨り背を向けているあり得ない姿勢。その腰を両手で支えてる手も見えた。
そんで、ハッとする。
あの後ろ姿、ヒロ君?
ゆっくり瞬きをしてみてもその光景は変わらんかった。
「……あ……」
俺はその場で立ちすくみ、状況を考えてみた。
なんでって、理解不能やったから。二人の行為に至る過程が全く持って俺には想像もできん。
ヒロ君は徹さんにまたがりキスしてるみたいやった。一度顔を上げて、また顔を下げる。
なんで?
絶句。徹さんは男の人専門みたいやし、おかしいことでもないんかもしれん。けど、なんで今?
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