もやもや

4/20
前へ
/148ページ
次へ
 ええなぁ、俺ももう帰りたい。  十二時を少し回り、ラストのお客がはける。残ったグラスを洗ってるとオーナーが「もういいよ」と声を掛けてくれた。 「すいません。ほな、お先上がらせてもらいます」  オーナーに会釈して早々にロッカーへ向かった。「はよはよ」と自分を急かしながら着替え、エレベーターに駆け込み、ビルを出た。  徹さんどこやろ?  キョロキョロと辺りを見回せば、道路にハザードを焚いて停まっている車を見つけホッとする。徹さんの車や。駆け寄るにつれ気づく。  なんやろ? 様子がおかしない?   フロントガラスに見えたのは運転席側の人影。  やけど……後頭部。  目を細めよく見る。どう見ても後ろ姿。運転席に跨り背を向けているあり得ない姿勢。その腰を両手で支えてる手も見えた。  そんで、ハッとする。  あの後ろ姿、ヒロ君?  ゆっくり瞬きをしてみてもその光景は変わらんかった。 「……あ……」  俺はその場で立ちすくみ、状況を考えてみた。  なんでって、理解不能やったから。二人の行為に至る過程が全く持って俺には想像もできん。  ヒロ君は徹さんにまたがりキスしてるみたいやった。一度顔を上げて、また顔を下げる。  なんで?  絶句。徹さんは男の人専門みたいやし、おかしいことでもないんかもしれん。けど、なんで今?
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

525人が本棚に入れています
本棚に追加