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これ見よがしに店の前でヤるとかないやろ。俺に見てゆうてるもんやん。ホンマわからんわ。なんで見て欲しいやろ。そういう趣味持ってんやろか。そうやったとしても、巻き込まんで欲しいな。いろいろ感謝したけど、この瞬間のための行程やとしたら……運気の神様とか思てた俺アホやん。まんまと踊らされて。もしかして、はじめっから? 紹介されたのも含め全部が仕込み? 徹さんとヒロ君はグル? めちゃめちゃ壮大やん。
車内の徹さんが耳に何か当てたら、それに連動するかのように俺の携帯が鳴った。携帯を見たらやっぱり徹さん。俺は石みたいなずっしり重い気分で携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし」
『お疲れ様。終わったか? 今ビルの前にいるが』
平然とした徹さんの声を聞いた途端、重かった石は消えてなくなってそのかわり目の縁からジワジワと水分が浮き上がってきた。
なにこれ。条件反射みたいや。俺はパブロフ犬か。
『……もしもし?』
袖でグイと目を拭って返事する。
「知ってます。俺ずっとココおりましたから」
徹さんが車から外を見てやっと俺に気づいた。
やっと? 見せるためやのに? 見られてることに興奮しとったのに?
徹さんが携帯を耳から外し車から降りてくる。こっちに来る間、俺は携帯を耳に当てたままずっと徹さんを見据えてた。徹さんは俺の前まで来ると、ちょっと困った表情で俺の肩を抱き車へと向かう。助手席のドアを開けて俺を座らせると、運転席側へ回った。
なんで黙ってんの?
車に乗り込み、シートベルトをしめようとした徹さんに我慢できんかった。
「……めっちゃ良かった?」
なんて言ってもええかわからんかった。だから見とったことを伝えたった。
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