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「え? なにが? というか、どうしたんだい?」
徹さんが戸惑った声で言う。
あかん。しらばっくれとる。ん? ちょっと待ってよ。何があかんのや? しらばっくれる必要なんてないのに。
徹さんの顔を見るのもできんで、助手席の窓の外へ視線を向けた。
「やから、ずっとココおったって言いましたやん」
喉が痛い。だからやろ。俺の吐き出した言葉もトゲトゲしとった。……あかん。もう止まらん。
「……別にええんですよ。付き合ってるわけでもないし。でも、利用されたんはなんかモーレツに癪なんです」
腿の上でギュッと握っていた拳をがそっと包まれる。
「海斗、ヒロキが車に乗ってたのを見たことを言ってる?」
「他に何があるん? それしかないし。ヒロキって……人の趣味をとやかくは言いませんけど、正直、ついていけません」
俺は空いてる方の手で目頭をグッと押さえた。
「嫌な気分にさせてごめん。ヒロキが海斗は十二時半まで降りてこないと言ってたから……」
焦った声で、徹さんが俺の頭を撫でる。俺はそれを払った。
「もう、やめてもらえます? そういう仕込みもホンマ嫌ですから」
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