もやもや

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「……そこは置いといて……俺は前にも言ったけど、海斗の正直さや、損得抜きで物事を考える姿に感心したんだ。だから海斗のことを信用できると思ったし、好意を持った。困っているなら助けたいとも思ったんだよ?」  徹さんは俺を真っ直ぐ見て必死に語った。 「それがヒロキには気に入らなかったんだと思う。突然、またがって来たと思ったら、誘ってきた。好きな人がいるから出来ないと断ると、毒を吐いて降りてったよ」 「……そーやったとしても、俺のこと好きなんもホンマやったとしても、ヒロ君をヒロキって呼んどるし、知り合いやし、むっちゃ親しいやん……ってこれ嫉妬とかちゃうし、ただのつっこみやし」 「ヤキモチなら嬉しい。ヒロキは、初めて会った時からヒロキとしか聞いてないから……店ではヒロ君と呼ばれてるんだね」 「俺が友達やおもて呼んでるだけやし」  徹さんは言いにくそうに続けた。 「俺は不器用で、社長をしているクセに従業員にも怖がられてしまう男だ。人間関係を構築できないというか……人との距離の詰め方がよく分からないし、いつも堅苦しい態度で空気を重くしてしまう。そんなんだから、恋人も作れない。だから、そういう店で一時の慰めを楽しんでいた。それは否定しないし、批判されても何も言えない。ヒロキもそれで出会った。知り合いと言えば知り合いだけど、ヒロキとプライベートで会ったことは無いよ」 「言い訳したって、車乗せてるもん。俺来るのわかとって乗せてる時点で謎過ぎやもん」 「海斗は十二時半にならないと出てこないよと言われて、海斗の店での様子を知りたい? と聞かれたんだ。女の子たちにモテモテだと匂わせて……愚かだったよ」  徹さんは俺の肩から手を離し、しょげた様子で運転席へもたれた。 「俺を待ってるってゆーたんっすか?」 「海斗と俺が一緒に住んでることをヒロキは知ってたよ。海斗が話したんだよね?」  俺が話し……たか。確かに紹介してもらったお客さんとこに住むって話はした。徹さんは被害者で、俺を騙してたんやない? 
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