もやもや

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 俺は両手で顔面を覆い、ゴシゴシと擦った。  真相? は筋も通ってるし。でも……。 「……これはこれでキツイ……」  徹さんが腕を組んで俯く。 「いっそ、徹さんに騙されたって思って悔しがってるだけの方がええわ」  告白までされてもうて、めちゃくちゃ気まずいし。徹さんに酷いことも言うてもうた。俺は手のひらで口を覆い、下唇に歯をたてた。 「……ホンマごめんなさい」 「海斗が謝ることないよ。嫌な思いさせて悪かった」  徹さんはシートベルトをして俺にも「シートベルト着けて」と促し車を発進させた。もう、徹さんの顔もよう見れん。俺は膝に肘をつけ、うなだれるようにずっと俯き顔面を手で覆うように隠した。無言のまま運転していた徹さんやけど、大きな交差点の赤信号で後部座席へ手を伸ばした。 「はい」  徹さんの声にチラッと顔を上げたら、大きな紙袋が渡された。紙袋には真っ赤なリボンがしてある。 「なんです?」  開けてみると、中にはたくさんのディズニーグッズが入っとった。フェイスタオルにバスタオル。歯ブラシやコップ、キャップに腕時計、ミッキーの模様の入ったTシャツやドナルドのパーカー。ポケットにミッキーの刺繍が入ったジーンズ。斜めがけのカッコイイバッグにはミッキーの形をした銀色のボタンがついてる。クッと胸に何かが込み上げる。俺はその袋をギュッと抱えた。 「めっちゃかわいいしっ……」 「せっかくだから、ディズニー仕様で電車通勤したらどうかなって」  徹さんが「ふふ」と笑いながら言った。 「ずるい、狡いわ。徹さん。……こんなん、俺、めっちゃ好きなってまうやん」 「好きになってほしいよ?」  徹さんがアクセルをゆっくり踏みながら言うた。徹さんの横顔はさっきまでの落ち込んだ表情やのうて、口元だけ微笑んだ優しい表情で、むっちゃ大人な感じがした。 「ありがとう、着ていく」 「うん。きっと似合うと思うよ」  徹さんは片手でハンドルを握ったまま、片方の手で俺の頭をポンポンと撫でた。さっきは徹さんの手を払って「やめろ」ゆうてもうたのに、またしてくれた。もう、払ったりせんから。 「ありがとう」
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