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金銭のやり取りだけやない、二人の関係にムカついて、同時に徹さんを惜しゅうなってたんやもしれん。
徹さんは車の中で「好きだ」ってゆうてきた。俺に「好きになって欲しい」ともゆうた。どうやら恋愛相手って意味らしい。でも部屋に入ると、いつもの徹さんに戻っとって、俺が安心できるよういつも通りに振舞ってくれはった。
車内でのやり取りで、俺の気持ちもだいたいわかったやろうにって思ったけど、もしかして分かっとらんのかな? それとも本当はもっとグイグイ押したいって思ってる?
徹さんの言葉を思い出す。
『人との距離の詰め方がよく分からないし』
「……距離の詰め方……か」
あんな泣いてもうたんって、母ちゃんが死んだ日以来かも。それはもうアレやな。あん時は、徹さんの手前、意地張ってもうたけど。なんやかんや特別ってゆうか……徹さんに惚れとるってことちゃうんやろか。
俺が詰めたろかな? 二人の距離。プレゼントかていっぱい貰ろたし。感謝の気持ちのお返しっちゅーことで。そうと決まれば……。
「よいしょ」
湯船のヘリに手を突きザブンと風呂から上がった。徹さんに貰ったパジャマに着替え、頭を拭きながらリビングを覗く。徹さんの姿は無くて、寝室のドアはやっぱり開いとった。いつもやねん。閉じこもらんと、開けっぱなし。
まるでいつでも入ってきていいゆうように開放してある。
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