もやもや

12/20
前へ
/148ページ
次へ
 金銭のやり取りだけやない、二人の関係にムカついて、同時に徹さんを惜しゅうなってたんやもしれん。  徹さんは車の中で「好きだ」ってゆうてきた。俺に「好きになって欲しい」ともゆうた。どうやら恋愛相手って意味らしい。でも部屋に入ると、いつもの徹さんに戻っとって、俺が安心できるよういつも通りに振舞ってくれはった。  車内でのやり取りで、俺の気持ちもだいたいわかったやろうにって思ったけど、もしかして分かっとらんのかな? それとも本当はもっとグイグイ押したいって思ってる?  徹さんの言葉を思い出す。 『人との距離の詰め方がよく分からないし』 「……距離の詰め方……か」  あんな泣いてもうたんって、母ちゃんが死んだ日以来かも。それはもうアレやな。あん時は、徹さんの手前、意地張ってもうたけど。なんやかんや特別ってゆうか……徹さんに惚れとるってことちゃうんやろか。  俺が詰めたろかな? 二人の距離。プレゼントかていっぱい貰ろたし。感謝の気持ちのお返しっちゅーことで。そうと決まれば……。 「よいしょ」  湯船のヘリに手を突きザブンと風呂から上がった。徹さんに貰ったパジャマに着替え、頭を拭きながらリビングを覗く。徹さんの姿は無くて、寝室のドアはやっぱり開いとった。いつもやねん。閉じこもらんと、開けっぱなし。  まるでいつでも入ってきていいゆうように開放してある。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

525人が本棚に入れています
本棚に追加