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若干の緊張を覚えつつ、「おじゃまします」と入ってベッドに腰を下ろし待ってると、しばらくして徹さんが戻ってきた。その手にはグラスの乗ったトレーを持っとった。トレーをデスクに置き、ベッドに腰掛けてる俺の足をポンと叩く。二つあるフワフワの枕を立ててヘッドボードへ寄せる。
「足も上げて、背中もたれていいよ」
「あ、うん」
「湯冷めする」
徹さんは足元の掛け布団を引っ張り、お腹の辺りにまで掛けてくれはった。
「徹さんってお母ちゃんみたい」
「あははは。そうか? 飲むといい」
グラスにはレモンの輪切りが入った炭酸水。ガラスの中でシュワシュワ小さな泡が踊ってる。徹さんのは同じような色やけどもっと金色をしてて炭酸じゃないからきっとワインとかなんやろう。
「いただきます」
豪華なベッドで、おしゃれな飲み物。ホンマ現実とはかけ離れとる。考えてると、徹さんが小首を傾げ穏やかな声で尋ねた。
「なにか不安があるのか?」
「あ、やっぱり」
炭酸水を徹さんにクイッと一瞬向け、それを口へ運んだ。爽やかなシュワシュワが喉をスッと通っていく。
「あー美味し。さっきまでな、徹さんのこと中学ん時の校長先生にみたいって考えとってん。振る舞いつーか、考え方? そうゆーのが似てはる」
「校長先生?」
徹さんが苦笑いした。
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