もやもや

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「うん。校長先生。ええ人やった。俺、お母ちゃんも、校長先生も好きゃで」 「……ありがとう」  徹さんの声は少し沈んでるみたいやった。  ありゃ、失敗? そやな。この言い方はあかんな。親愛の情やと受け止められてもしゃーない。うーん……。 「でも、俺らやってもうてるし。二人に似てるけど、徹さんは特別やで」 「ぶっ」  徹さんがワインを吹き出し軽くむせた。 「わ! 大丈夫? 飛んでもうたかなあ?」  布団に飛んでないか確認してると、徹さんが布団をめくりベッドへ上がってきた。隣に座ってあぐらをかき、また布団を掛ける。 「あの日のことを繰り返し思い出しては考えてたよ」  顔を上げ徹さんを見た。  あの日って、初めて会った時のことやんな? 「出会いを求めるヒマも心の余裕も無くて……知っての通りコミュニケーション能力が不足してるから。でも、人肌が恋しくて、一時のやすらぎを求めて金を払ってきた。そのあと、ひどく虚しくなるのは分かっていて。それでもいいと思ってた」  徹さんが俺の頬をそっと包む。大きくて、温かい手。 「海斗と出会えて良かったと思ったし、あんな出会いじゃなかったら良かったのにって思った。海斗は普通の男の子なのに無理させてしまったことを後悔してる」 「普通ってゆうか、慣れてないだけやろ? 逆にヒロ君みたいに慣れっこやったらもっとすんなり付き合えとったのかも」 徹さんの目が細くなった。 「俺と付き合ってくれるのか?」
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