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「何にもねぇ!」
ー--断捨離、3日目にして詰んだ。
元々ものを持ってる方じゃない。
ただでさえ狭い部屋、これ以上狭くしたくねえし。
学生時代から要領は悪くなかったんで、友達はいた方だと思う。
でも会社に勤めてるうち、飲みや遊びの誘いを行ける状態じゃねえと断り続けてから段々と関係が薄れた。
悪いとも寂しいとも思ったけど、会社に洗脳された俺には仕事より優先するものがなかった。
「……これ以上何捨てたらいいんだ?」
不用品。戻って来た上になんか増えてる。
ツイッター。FF全体で減りはしたものの、よく分からんフォロワーは増えてる。
他に持ってるもん……あ、ソシャゲとかどうだろう。
タイムラインに流れてきた『ガチャ最大100回無料!』の文字に惹かれて始めたゲームが1つある。
暇つぶしにプレイしてたけど、強くなっても得るものは別にねえ。
イベント時にはやたらやり込んで、ただでさえ貴重な睡眠時間を削らされていた。
俺はゲーム内倉庫にしまい込んでいたアイテムと武器を、迷いに迷った末29個売り払った。
入手するのに苦労した代物もある。正直悩んだ。
でも。持ってたからってすごくどうとかいうことはない。
それに、もう捨てるもののネタがこれ以外思いつかねえ。
『アイテム売りました #100個捨ててみよう』
スクショ写真と共にツイートを送った後。
折りたたみテーブルの上に、雑に書き込んでいたメモを手に取る。
断捨離を始めた一昨日から書きつけていたものだ。
確かめて、偶然だろうがその数字に驚いた。
30-29(ソシャゲ内アイテム)
断捨離残り数1
「残り、1か……」
一体、何を捨てる?
最後の一個って、なんか重要な気がする。
部屋を見回した。
謎の送りつけ主から来た品がいくつか。
新しいフォロワー。何もしてないのに切る勇気がない。
ソシャゲのアイテムはもう空っぽだ。
自分で手にしたものを捨てなきゃ、意味ない気がした。
「……いや俺、本当にもう何もねえや」
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