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元号が令和に変わり。 新しい時代が始まったと、世間には希望と期待が満ち溢れる5月の朝。 壁の薄いボロアパートの隣の部屋から、拳を打ち付ける衝撃音と共に怒声が響き渡った。 「ヒェッ! あのクソじじい……何でこんな時だけ聞こえてんだよ」 耳は遠いくせに、ガタイの良い隣部屋の爺さんには聞こえるはずのない言い訳を唱えながら壁を離れた。 「1個目は会社? 仕事でいいよな」 散らかった安っぽい折りたたみテーブルの上を覗く。 やべ、昨日のカップ麺零した奴が渇いて痕になってる。 「履歴書に付いたらヤベェ」 濡らして来た布巾で拭こうと、履歴書を取り上げた手から雫が落ちていった。 「職歴」と書いた文字の上に落ちた水は、ものの見事に滲んで灰色のシミになる。 昨日、1時間以上もかけて完成させた奴。 何で履歴書は手書きなんだ。 そんなルールを作った奴はテーブルの足にぶつけて小指を骨折しろ。 何も考えずにスマホを取ってツイッターを開く。 『全部めんどくさくなった』 フォロワー二桁。その大半にすらミュートされているであろう俺のツイートにリプライが返ってくることはねえ。 「---さてと。どっから手をつけっかな」 狭苦しいくせに、物が増えて散らかりまくった部屋を見回す。 仕事を辞めてから一気に物が増えた。 暇になり。マンガ買ったり読んだマンガの影響で囲碁セット買ってみたり、ゲーセン寄って欲しくもねえ景品を取って来たりでとにかく物が増えた。 とりあえず20個捨てることにした。 会社を1つ目にしたから、今日はあと19個。 元々大して欲しくもなかったものを、片っ端から適当なビニール袋に放り込む。 これだけ捨てたという記録代わりに写真を撮って添付し、ツイッターに一言書き込んだ。 『身辺整理します #100個捨ててみよう』
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