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「……フォローしてたの、君だったのか」 「うん。おにいさんと会った日のこと、ツイッターに書いたんだよ。もしかしたらおにいさんも書いてるかと思って。そんでアカウント見つけたの」 ブロ解したのに新しくフォローしてきた一人。 アニメオタクのアカウントは、以前会った少女だった。 同じ出来事を体験したツイートを見つけて、俺だと確信したのだという。 会社で俺がいじめられていたと思っていた彼女は、例の100捨てるタグを見て不安になったらしい。 「他のアカウントはね、わたしのお友だち。フォロワーいっぱいつながってたら、さみしくないから」 「……そっか。ありがとな」 フォロワーなんて数いても意味ない。でもこの子はそんな風に思えるくらい優しくて、純粋なんだな。 俺がとっくの昔に捨てたか無くしたもの。 「……んで。パソコンオタクの早寝早起きは、ジーさ……山崎さんだったんすか」 腕組みをして俺を見下ろす爺さんに顔を向ける。 「ワシはジジイじゃが、パソコンに関してはちょっとしたもんでな。お前さんが時々上げる風景写真を解析して、近所の奴だと目星をつけたら隣人だったんじゃよ」 「こえーよ! サイバージジイか!」 「誰がサイバージジイじゃ!」 殴られる前に土下座して謝る。 ちなみに謎の送りつけ犯もこの爺さんだった。 俺の身辺整理ツイートを見て死ぬ気だと勘違いし、とりあえず同じようなものを送りつけることで止めようとしたらしい。 ほしい物リストまでチェックするとか、もう完全にストーカーじゃねえか! 「お前さんが欲しがってたもんも送ってやったじゃろ。仕事を辞めてからというもの、ずっと死んだような目をしていたから元気を出せと思ってな」 ガハハと笑う爺さん。 ……なんで、俺にそんなことすんだろう。ゴミ出しの時に挨拶してただけじゃん。 「---そんで、あなたまで俺のことフォローしてたんですか。それ労基の仕事ですか」 謎の海藻アカウントはこの人だったのかと、労基の職員の顔を見る。 「は? フォローってアレですか、ツイッターの」 「当たり前でしょ」 「知りませんよ。わたしは職場に、あなたが自殺するかもしれないからココに行ってみてくれと通報を受けただけです」 ……通報? 心当たりがない。てっきりこの人が海藻アカウントの中の人かと。 「何にせよよかったですよ。命を粗末にしないでください」 「ホントだよ! こんなバカなこともう2度としちゃダメだよ。みんなしんぱいするよ?」 「仕事がなくなったたくらいで何じゃ、100個目に命を捨てて終わりにしようとは。ツイッターもロクなタグが回らんな。若いんじゃから、こっから気張って見せんかい」 ウンウンと頷きあう3人。 嬉しいのかな。悲しいのかな。 だから俺は。 「---自殺しにきたわけじゃねぇんだよおぉぉぉ!」
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