諸恋H&E

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 いや、最初は高校入学と同時に諦めるつもりでいたのだ。アイツが入れないような高校に進学して、物理的に離れてしまえばきっとアイツの事なんて忘れてしまえるはずだと。  それなのに何をきっかけにして一念発起したのか、勉強が苦手で嫌いな筈のアイツは猛勉強に猛勉強を重ね、県内有数の進学校への入学切符を手にしてしまった。意味がわからない。  そのくせ何か目標を持っていた訳ではないらしく、特記してやっている事と言えばこれまでと同じく告白と玉砕の繰り返し…ああ、いや、部活ではそれなりに活躍していると自慢していたか。  文武両道を掲げる我が校は部活にも力を入れており、アイツが所属するテニス部は全国大会の常連だ。昨年度も全国大会にコマを進めており、そこでキャプテンを務めるくらいなのだからアイツの言っている事に嘘はないのだろう。  そういえばその実績を元に部費アップの要請がきていたが、他の部活も良い成績を修めている以上、今年の部長会議も激しい論争が繰り広げられそうだ。  去年は書記としてだったが、今年は生徒会長として会議に参加するので気は抜けない。何せ奴等ときたら何回無駄だと言っても賄賂を寄越してくるのだ。…今年ならまだしも、書記にそんな発言権があると思うなよ。  放課後に控えた会議はここ暫く憂鬱の原因でしかなかったが、その理由はこまめに差し出される生ぬるい優しさでも、下手をすれば会議中に筆箱が飛び交うからでもない。  なにせ部長会議なわけで、当然ながら部長であるアイツも会議に出席する、この一点に尽きた。
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