ボランティア部員

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ボランティア部員

「山野さん、今日はボランティア部に行きますか?」 「……ぁい?」 ゴホゴホと咳き込んで、出てしまった変な声を誤魔化す。うわー、恥ずかしい、教室で喋るのなんて久しぶりだから声が上ずってしまった。 ホームルームが終わり、帰ろうとしていた時に私は田辺先生から名指しで声を掛けられた。 あの日から10日程経ったが、私はボランティア部に行ってない。 「何か予定でも?」 「いやぁそう言うわけではないけど」 「じゃあ、一緒に行きましょう。ええ、行きましょう、いいですよね?」 「えぇ、まぁ」 またも強引な先生の手腕で私はボランティア部に顔を出すことになった。 「やぁ山野さん久しぶり」 真木は既に部室にいた。さっきまで同じ教室にいたはずなのに。 「久しぶりってさっきも一緒だったじゃん」 「でも喋ってないしね。山野さんいつも一人で声掛け辛いし」 「お互い様でしょ」 真木のことを言えないくらい、私も教室で浮いている。まぁたまにしか学校に来ない、しかもそれが理由もなくサボってるだけな奴に友達がいるはずもないだろう。 「僕ずっと山野さんを待ってたんだから」 「え、何よ気持ち悪い」 「はいこれ」 手渡されたのは一枚の便箋。 「なによこれ」 「どうぞ開けてみてください」 先生は微笑みながら私に手のひらを向ける。その便箋を開けてみると、クレヨンで書かれた大きな文字が。 『ちゅうがくせいのおにいちゃん おねえちゃん ありがとう!!』 「この前幼稚園のお遊戯会があったんだって。それでお手伝いした飾り付けの感謝の手紙を預かってたんだ」 お世辞にも綺麗とは言えない形も崩れた文字だけど、綺麗に書くより伝わるものがあった。 「こういうものってすごく心が温かくなりますよね。私が歳をとっているからか余計にそう感じます」 「そう、ですね」 「園児のみんなが一生懸命字を習って頑張ってくれた手紙です。山野さん、大切にしてください」 「……え、私が貰っちゃっていいんですか?星を作ったのはほとんど2人なのに」 「山野さんにあげていいですよね、ねぇ真木君?」 「ええ、たしかに完成したのは少なかったですけど、一番頑張ってくれたのは山野さんです。もちろん、いらないっていうなら僕がもらうけど」 「だ、ダメ!これは私の!くれるんだったら私がもらうの!」 この手紙は私にとって宝物になるだろう。 中学に入って、初めて自分が必要にされた。求められるってこんなに嬉しいことなんだ。 これをきっかけに私はボランティア部に所属することになった。
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