ボランティア部員

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「次の土曜ですか?」 「はい、もちろん強制ではありませんよ。ボランティア部は休日の活動はありませんから」 夏に差し掛かった7月の放課後、田辺先生が新しいボランティアの話を持ちかけてきた。 知り合いが次の土曜日に隣町で募金活動を行うらしく、もしよかったら人手を貸して欲しいとのこと。 「どうですか、2人とも」 「えー、流石に休みの日はだるいなぁ。私はいいです」 休みの日にわざわざ隣町まで行くのも面倒くさいのに、更にそこから募金活動しなきゃいけないんでしょ? 真木もこれはさすがに嫌がるだろうと思って隣をみると、そこにいつもの真木はおらず。 「僕は出ます」 その時の真木の目は真剣そのものだった。 「わかりました。真木君ありがとうございます。山野さんももし気が向いたら隣町に遊びに来てください。たぶん一日中いますので」 先生の言葉を耳にだけ入れて、もう一度真木を見ると、生気がないいつもの真木の目だった。 「せっかくの休みなのに私はなにをやってるんだろう」 土曜日、私は自転車に跨り隣町に向かっていた。 時刻は昼の1時過ぎ。私をぐるぐる包むような太陽の日差しはペダルをいくら漕いでも巻けなくて、隣町の駅前に着く頃には額にじんわり汗すが滲んでいた。 あの真木の目を見てなければ、私は今頃家でアイスを食べていたに違いない。真木と喋るようになって数ヶ月、初めてみた真木の真剣な眼差しは私を掴んで離さなかった。 隣町まで自転車で行くのは初めてで、目的地まで迷わないか心配だったけどそれは杞憂に終わった。 「募金お願いしまーす!!」 駅に近づくにつれ、聞いたことある声が段々と大きくなっていく。 道を右折して駅の目の前に着くと、想像もつかない大声を張り上げる真木がいた。 「募金お願いしまーす!!」 朝からずっとあの調子なんだろう。声はガラガラで大粒の汗をかきながら道行く人一人一人に頭を下げて寄付を募る真木の目は、あの日にみた真剣そのもの。 声を掛ける真木。頭を下げる真木。手慣れた手付きで説明をする真木。笑顔で受け答えする真木。 私は長い間真木に見惚れてしまった。 恐らくあれが初めてじゃないんだろう。真木は、私が何となく学校をサボってる期間も、噂だけで真木を嫌っている期間も、私がボランティア部でダラダラ過ごしている期間も、ああやってずっと懸命に過ごしてきたんだろう。 そんな真木の姿を目の当たりにして、私は私が恥ずかしくなった。 恥ずかしくて消えてしまいたいけど、今私がやるべきことは消えることではない。 今私にできることはこれしかないと、私は財布を持って真木に近づいた。 「募金……あれ、山野さん?」 「真木、おつかれ様」 「どうしたの?」 「いや、まぁ気になって。これ、ここに入れたらいいの?」 「え、あ、ありがとう山野さん!ご協力ありがとうございます!」 その笑顔は今の私には眩しすぎて、真木の目を見れなかった。 「ん。じゃあまた明後日ね」 「山野さんありがとう!」
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