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「山野さん、昨日はありがとう」
今日も部室には私と真木だけ。先生は今日部室には来ないらしい。
「真木さ、一個聞いていい?」
「なに?」
「前にさ、将来なりたいものの話したじゃん。覚えてる?」
「あぁうん」
「あれ、どう言う意味なの?」
今度は聞き流さず、私は真正面から真木と会話する。
「100万回目を生きたネコ?」
「幸せに死にたいってことなの?」
「そう。あぁ、いや、ありのままを受け入れて欲しいってことかも」
「全然違わないそれ?」
「僕にとってはおんなじことなんだ」
さっきから真木は上を見上げながら喋っている。なにを思い出しているんだろう。
「あの猫が何回も何回も死ねなかったのは、たぶんやり残したことがあったからだと思ってるんだ。肩書きじゃなく、外見じゃなく、地位じゃなく、中身を満たして欲しかったんだ。だからそれが叶った瞬間、野良猫は眠るように亡くなった」
誰を思い出しているんだろう。
「僕にとってのお母さんがそうであったように、誰かにとっての僕も100万回目を生きたネコでありたいんだ」
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