第一話 現実を持てあます

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第一話 現実を持てあます

ギリギリ生きてる。 このままだと、ボサボサの頭のまま帰らぬ人となりそうだ。 努力はしたのだ。 ただどうしても私は手際がよくない。 バイト先のファストフード店にも私へのクレームの嵐だったようだ。 「あなたたちを残して逝くわけにはいかないよ・・・」 飼っている金魚に話しかける。 心配しないでねと言いながら、このこたちはいざとなったら食べられるのだろうかと少し期待する。 「晴れて自由の身となりました~♪」 「お帰りなさい」 やはり社会とうまく適合しない友達の莉子(りこ)は快く私を受け入れてくれる。 彼女はかろうじてコーヒーの香りがする白湯のような飲み物をだしてくれた。 「働いてないだけで可哀相な人って目でみるのやめてほしいよね」 私はおおいにうなずき、気の毒なのは逆に毎日働きづめの人たちだよねと言う。 「特に生活に支障はない。お金がないこと以外は・・・」 珍しく莉子はうつろな表情になる。 「あーあー、ぶっ飛ぶほど美味いもん食べたいなぁ」 そう言う私の銀行口座には数百円しか残っていない。 「美咲(みさき)あたしさあ・・・」 莉子は最近ある人のことを考えずにはいられないのだとこぼす。 「マジで言ってるんじゃないよね?それ」 「え、いやこうなったらもう恥も外聞も無いかなと思って」 莉子は数年前まで小さな会社を経営している男の愛人だった。 その頃は毎月決まったお金をもらっていたので、生活はとても潤っていた。 「あいつには気持ちを踏みにじられたって暴れてたじゃん」 お金をもらっていながらも莉子は本気で愛し合っていると信じていた。 「うーん、なんか不健全なことしてたなっていうのは気付いた」 あのような男は世の中から根絶しなければならないと息巻いていたというのに、心変わりがはやい。 「今度はあたしがあいつを裏切ってみせようかと思って・・・」 「でもあの男のことだから、もう新しい女いるんじゃない?」 莉子はじゃあ奪い取ってから捨てると断言した。 やる気満々の莉子を見つめながら、こういう状態になったらこの子を止められる人はいないなと思った。
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