水口①

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水口①

桜の花が散り、葉っぱがつき始めた。春休み中ずっとアメリカに留学していたので、久しぶりの桜になった。登校中に見た桜の木は、とても落ち着いているように見えた。 当然、わたしは落ち着いてない。小学校最後のクラス替え、修学旅行や最後の運動会…『最後』と付くイベントの命運が今日、決まってしまう。 身長が伸びたのか、学校が少し小さく見えた。でも、ハルちゃんは相変わらずだった。 「おはよー、ハルちゃん」 「リンー!」ハグしてきた。 「毎回毎回、なんでこんなに甘えん坊さんなんだろうね」 「いーじゃん、甘えたって」 「そりゃそうだけど、中学になったら、その甘えグセなんとかしてよね」 「わかってるって、それぐらい」 「…本当?」 「ホントホント」 「嘘でしょ」 「げ!なぜバレた⁉︎」 「嘘ついたときの口癖だよ。『ホントホント』てハルちゃんが喋るの」 「そうかー。じゃ、気をつけよっと」 「じゃあ、新クラス、見る?」 「見る!」ハルちゃんと同じクラスだった。 「やった!ずっとリンと一緒だ!」ハルちゃんは、わたしの左で、大はしゃぎ。軽く飛び跳ねてさえいる。 「これで、六年間同じクラス、だっけ?」二、四、六年にクラス替えはない。 「九年間、だよ!」 「幼稚園のときも入れてる?まあいいけど」 わたしのクラスに、転校生がきた。 「高城です」早口でそうとだけ言うと、足早に彼女の席に座った。ずっとうつむいていたので、どんな顔かわからなかった。 「ねえ、高城さん」ハルちゃんと一緒に、話しかけてみた。 「え!え、え!えっと、水口(みなくち)さん?あと、久代(くしろ)さん?ど、どうしたの⁉︎」 「高城さんって、どこから来たの?」 「え、えっと…」 「あ、無理だったら、ごめん…」 「アメリカ!アメリカから来たの!」 「高城ちゃんって帰国、あれ、なんだっけ?」ハルちゃんが口を挟んだ。 「帰国子女だよ」わたしは返した。 「そうだった!キコクシジョなんだ!」 「まぁ、そうだね」さっきまでとは違い、高城ちゃんはスラスラとしゃべった。 「じゃあ、英語しゃべれる?」 「…ごめん。無理なの」 「え…」ハルちゃんにとって、帰国子女は、英語が話せる人だったらしく、驚いた顔をしている。 「学校の中、あんまり知らないよね?」気まずい雰囲気だったので、わたしは本題に入った。 「よかったら、わたしたちが案内してもいい?」 「あ、えっと、そ、その…」高城ちゃんはしばらく黙っていたが、 「…いいよ」ボソっと答えた。
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