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神川③
そんな訳で、今オレは二階の男子トイレの奥から二個目の個室にいる。高城がきっと、この怪談を試しに来るから、出てきたときに、告白しようと思う。
気がついたら、ドアはノックされ、その音は止んだ。多分オレは寝てしまったんだろう。そして、多分高城がドアの向こうにいる。オレは静かに百秒待とうとした。だが、
「ろくじゅういーち、ろくじゅうにー…」なんて急に大声を出された。少し驚いて、便座がガタっと鳴ったが、その声は確かに高城のものだ。大丈夫、オレはちゃんとコクれる。
それでも、「ひゃく!」なんて、今一番の大声で叫ばれたら誰でも、ひっ、と思わず言ってしまうだろう。オレもそうだった。
ひっ、く、くそ。後から気づいたが、このときのオレはプロポーズモードなどではなく、ただの戦闘モードだった。
ドアを開けると、そこには、高城がいた。というのは幻想だった。
小三のような見た目ではあるが、彼女は和服を着ていた。髪型は、いわゆる、おかっぱだが、ハサミの切れ味が悪かったのだろうか、前髪が揃っていなかった。また、何故かは知らないが、向かって左の髪に、ボリュームがなかった。
そして、彼女は空中であぐらをかいていた。
間違いない。彼女は、幽霊だ。向こう側が透けているのも、決め手の一つだ。
それに、あの幽霊に見覚えがあった。図工室にいた幽霊だ。
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