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「城はゲイの世界ではモテるのか」
久しぶりに声を発したと思ったら、俺のゲイ事情についての問いである。警戒しているなら、余計なことを聞かなければいいのに。
「モテないわけじゃないけど、俺のストライクゾーンに行くと、がっちり体型の若い男が好きなネコの人が多いからな。俺はネコだし、そういう意味ではあんまりモテないかもな」
恐らく「ネコ」なんて言われてもよく分からないだろうとさらっと言って、秀仁の方をちらと見る。と、秀仁が思いの外じっとこちらを見ていることに気付いて、視線を通りを行く人に移した。
「城は突っ込まれたい人なのか」
唐突に爆弾を投下されて、身体がびくりと反応して固まった。昨日あれだけのゲイ雑誌を読んでいたのだから、知識がついてしまったのだ。
「お、俺のストライクゾーンは五十歳以上! お前に興味なんか一切ないからな!」
しばらく俺を見てから視線を逸らすと、また黙り込んでしまった。
焦ったり怒ったり、昨日から一方的に疲弊していることに心底嫌気が差す。若いと興味本位で相手の気持ちを無視して何でも突っ込んでくる奴が多い。心を乱されるのが一番嫌いだというのに。だから若い奴は嫌だ。
目の前に車が止まる。運転席から降りてきた不動産屋の従業員に誘導されて車に乗り込む。あと少し早く来てくれたら、この男とこんな会話をせずに済んだのに、と思ってしまった。舌打ちしたい気分だったが、車内の雰囲気が悪くなるからやめておく。
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